「快足亀のパラドックス」(アキレスと亀・アキレウスが追い着けないパターン)


快足亀のパラドックス






オリジナル版の

ゼノン(前490~前430頃・古代ギリシアの自然哲学者)の

「アキレスと亀」には

「亀はアキレスより遅い」とだけ書かれているので


その条件の範囲であれば

「アキレスと亀」の解釈として問題はないということになります




wikiペディアのゼノンのパラドックスの中には

≪追付かない事例は、亀がアキレスより遅い事を維持しつつ

両者の速度差が急速に縮まる設定にすれば

亀に追いつくまでのゼノン式捉え方での時間の

積算が発散する事例を作ることが出来る

この事例は、古代ギリシア時代の数学では困難であったかも知れない≫

とあります





この「追付かない事例」

つまり「運動完遂が実際に不可能な事例」

について

ネットで調べてみたのですが

具体的に書いているサイトがみあたりませんでした




そこで、知り合いのアルゴリズムの教授に

「追いつけない」具体的な話を考えてもらいました



【 アルゴリズムとは、コンピューター(計算機)で、問題を解く手法のこと

その「やり方」を工夫して、より良いやり方を見つけよう

というのが、アルゴリズムの研究 だとされます


例えば、乗換検索のアプリなんかで出発駅と目的駅を入れたら

経路がいくつか出てきますが

こういうものを求めるときに

どうやったら短い時間で求められるか?

を考えるのがアルゴリズム屋さん だそうです 】






ちなみに、一般の「アキレスと亀」(ゼノンのアキレスと亀)が

なぜ、アキレスが亀に追いつけるかというと

追いつくまでの時間、例えば2秒後、2mまでの

時間と距離を、無限に刻んでいるにすぎず

2秒たてば、アキレスは追いつけるということです





「ゼノンのアキレスと亀」を書いておきますと


アキレス(ギリシア神話に登場する英雄)

と亀が競争しました



アキレスにはハンデを負わせ

亀のスタートするA地点より

後ろのB地点からスタートさせます



1人と1匹は同時にスタートします

アキレスの速度を亀の2倍とします

AからBの距離を1とします



するとアキレスがAに到着したときには

亀はそこから1/2進んでいる


次にアキレスが亀のいた1/2地点に到着すると

亀はアキレスより1/4進んでいる



アキレスが1/4地点に着くと、亀はそこから1/8先にいる‥‥


こうしてアキレスは永遠に亀に追いつくことができない


といったものです




じつは、亀が与えられたハンデの距離が1で

アキレスの速度が亀の2倍だから

亀が1進んだらアキレスは追いつくことができます



ですが、亀の進む距離が

1/2+1/4+1/8+1/16+1/32+1/64+1/128‥‥で

この計算方式だと1になることはないのです



【 亀の進む距離… 1/2(2/4)+1/4=3/4  3/4(6/8)+1/8=7/8

  7/8(14/16)+1/16=15/16  15/16(30/32)+1/32=31/32

  31/32(62/64)+1/64=63/64

  63/64(126/128)+1/128=127/128

  127/128(254/256)+1/256=255/256 】






これを時間で、説明すると



アキレスが秒速1m・亀が秒速0.1m

アキレスはA地点から、亀はB地点からスタートします



スタートから1.9秒後

アキレスは1.9m地点(B)  亀は1.99m地点(C)にいる


スタートから1.99秒後

アキレスは1.99m地点(C)  亀は1.999m地点(D)にいる


スタートから1.999秒後

アキレスは1.999m地点(D)  亀は1.9999m地点(E)にいる


ということになり


アキレスが、亀に追いつこうとする行為は

1.999999‥‥秒後と

無限に繰り返すことができます



しかし、本質的には、スタートから2秒後には

アキレスは、亀に追いくことができます






数学においては、この事実をもって

「アキレスと亀」は


「無限の回数を繰り返せる」ことと

「無限の時間かけても追いつかない」こととを

混同するところから生まれているパラドックスである



「回数の無限」と

「時間や距離の無限」とを

混同するところから生まれているパラドックスである


という反証がなされるわけです








これに対して

wikiペディアの「追いつけない事例」が

ここに記す

知り合いのアルゴリズムの教授に

つくってもらった話です


難しい計算式がいっぱい書いてありましたが

最低限必要なもの以外

全部とっぱらって


誰が読んでも分るように

必要な説明を入れて、手直ししたものです





トップクラスのマラソンランナー張りに走る亀

題して「快足亀のパラドックス」




構成は


アキレスが

亀いる地点(A)に到着したとき

亀は次の地点(B)にいっている


アキレスがそこ(B)に着くと

亀が次の地点(C)にいっている


アキレスがそこ(C)に着くと

亀が次の地点(D)にいっている


というゼノンのパラドックスと一緒です





前提①

アキレスの秒速は5m

亀の秒速は2.5mでスタートする


亀は、アキレスより100m先(A地点)からスタートします




前提②


アキレスが100m(a1)進みA地点にくると

亀は100/2=50m(a2)進んでB地点にいる


アキレスが100/2=50m(a2)進みB地点にくると

亀は100/3=33.3...m(a3)進んでC地点にいる


アキレスが100/3=33.3...m(a3)進みC地点にくると

亀は100/4=25m(a4)進んでD地点にいる


アキレスが100/4=25m(a4)進みD地点にくると

亀は 100/5=20m(a5)進んでE地点にいる


これを繰り返していきます





ゼノンの「アキレスと亀のパラドックス」の場合


亀の進む距離が、アキレスのそれに対して

1/2(a1) 1/4(a1) 1/8(a2) 1/16(a3) 1/32(a4)...

となっていきますが


a1+a2+a3+a4... =具体的な数字

なので、アキレスは亀に追いつけます



≪アキレスが、亀に追いつけないように

追いつくまでの時間を細かく=無限に刻んでいるだけ≫

だからです






しかし「快足亀のパラドックス」の場合


アキレスが亀に追いついたと仮定すると


このとき、アキレスが走った距離は

a1+a2+a3+a4...=∞ となるのですが


合計が、∞ということは

永遠に追いつけないことになります





じつは「快足亀のパラドックス」では


アキレスの秒速は5mのままなのに


亀の速度は、アキレス速度の

a2(亀の走った距離)/a1(アキレスの走った距離)=1/2倍から

a3/a2=3/2倍  a4/a3=4/3倍...と、速くなっていき

限りなく秒速5mに近づいていっているのです




「アキレスと亀のパラドックス」の場合だと

アキレスが50m(a2)進みB地点にくると

亀は50/2=25(a3)進んでC地点にくる


という設定なのに対し



「快足亀のパラドックス」の場合

アキレスが50m(a2)進みB地点にくると

亀は100/3=33.33...m(a3)進んでC地点にくる

=亀は加速している

という設定にしているわけです




すなわち、オリジナル版の

アキレスと亀のパラドックスの条件は

「亀はアキレスより遅い」というだけなので


亀の速度が、アキレスの速度を超えない範囲内であれば

亀が加速されていても、何も問題ないのです





教授によると


「快足亀のパラドックス」を成立させる

数列 a1、 a2、 a3 ...の条件としては


・a(1)>a(2)>a(3)>...  亀の方がつねに遅いことを表す

・a(1)+a(2)+a(3)+...=∞  アキレスが永遠に追いつけないことを表す


この2つを満たせばいいだけなので


a1=100/1、a2=100/2、a3=100/4...

a(n)=100/n である必然性はない


上記の2条件を満たす例の一つにすぎない


ということでした








この「快足亀のパラドックス」は

亀が加速しているとはいえ

アキレスの速度を超えることはないのです



亀がアキレスに追いつかれないよう

必死にがんばって、加速していく

でも、アキレスの速度には追いつけない


ならばいつかアキレスに

追いつかれてしまうはずですよね



にもかかわらずアキレスは

永遠に亀に追いつくことはできない



不思議だと思いませんか!!







教授に聞くと



比喩的に表現するならば

マラソンで2位のランナー(アキレス)に

追いかけられているけど


何とか1位でゴールするマラソンランナー

それが亀



マラソンの場合は

明確にゴールがあるから分かりやすいけれど

アキレスと亀にはゴールがない



だからいずれ追いつくように思えますが

本質的にはマラソンと変わらないという話です




「快足亀のパラドックス」の場合

ゴールがない代わりに

「時間は有限」という制約があります


無限の時間が

存在するならば

アキレスは亀に追いつきます



例えば、1億年だって1兆年だって

人間にとっては無限のような時間でさえも有限で


どれだけ長い時間に設定されたゴールに対してでも

亀がアキレスに抜かれないように

懸命に速度を上げているのが実態です




亀さんは

アキレスに追いつかれるにつれて

速度をアキレスの速度に (抜かない程度に)

近づけていく必要があります



実際、亀の速度は、次のように捉えることができます


(アキレスの速度を秒速50mとする)



最初(アキレスとの差が100m)の

亀の速度は、秒速50×1/2=25m



アキレスとの差が、100/2=50mになったら

亀は速度を、秒速50×2/3=33.33...mに上げる



アキレスとの差が、100/3=33.33...mになったら

亀は速度を、秒速50×3/4=37.5mに上げる



アキレスとの差が、100/4=25mになったら

亀は速度を、秒速50×4/5=40mに上げる



アキレスとの差が、100/5=20mになったら

亀は速度を、秒速50×5/6=41.66...mに上げる


(無限に繰り返す)



ちなみに

アキレスとの差が、100/100=1mのときには

亀は速度を、秒速50×100/101≒49.5mに上げます

(≒は、ほぼ等しい)



アキレスとの差が、100/1000=0.1m=10cmのときには

亀は速度を、秒速50×1000/1001≒49.95mに上げます



アキレスとの差が、1cmのときには

亀の速度は、秒速49.995mほどになります


亀の速度、アキレスと殆ど変わらんやん!って話です





そんだけ速く走れるなら

最初から秒速49.995mで走ればいいじゃん!

って思うかもしれませんが


この速度であっても

速度が上げられなければ、いずれ追いつかれます

(100/(50-49.995)=20000秒後かな?)




だから亀は、秒速50mを上回らない範囲で

速度を上げ続けることが重要なのです




亀さんはこうやって

速度を上げることで時間稼ぎをして


有限に設定されている

時間のゴールに飛び込んでいます






「快足亀のパラドックス」には

「時間は有限」という制約があるというのは?



あくまで

「無限の時間が存在するならば」です



このパラドックスでは

a(1)+a(2)+a(3)+...=∞ が

アキレスが亀に追いつけないことを表しています



a(n)が、アキレスと亀の距離の差で

nは、アキレスが亀に追いつこうとする回数です



なので、n=∞のとき、a(n)=0

という条件を満たすときの

a(1)+a(2)+a(3)+...の時間

すなわち、無限の時間で

アキレスは亀に追いつくことになります



具体的には

アキレスが亀に追いつくまでの時間は

(a(1)+a(2)+a(3)+...a(∞))÷アキレスの速度

となります




理論上でも、無限の時間で追いつくということは

アキレスが亀に追いつけないのは有限の時間のことに限る


「快足亀のパラドックス」には

「時間は有限」という制約があるということになります









ついでに、教授に

ゼノンの「飛ぶ矢」のパラドックス

についての考えを尋ねると、以下の解答をいただけました




「飛ぶ矢」のパラドックス (飛ぶ矢は動かず)


【 飛んでいる矢も

その一瞬一瞬を考えれば止まっている


瞬間とは点であって延長を持たないから

ある瞬間における矢は動いていない


瞬間をいくら足していっても

矢は動いていないはずである 】






無限に積み重ねるとは

有限個 積み重ねるのとは違うのです


0を1京個足しても0は0だけど

0を無限に足したら0とは限らないということです



飛ぶ矢のパラドックスでも同じで


動きが0の瞬間を1京個集めても

動きは0のままだけど


現実の時間は

瞬間=0を、無限に集めたものなので

動きが0のままとは限らない


それが有限と無限の違いということになります





0+0+0+0+0+・・・(1京個)=0

0+0+0+0+0+・・・(無限個)=∞

ということですか?



違います

0+0+0+0+0+・・・(無限個)は


0かもしれないし

何らかの数字かもしれないし

∞かもしれないということです


何でも出てきます

ケースバイケースです




0+0+…(無限)=0 はいい例がないですが

不思議に感じないと思うので

例が必要ではないかと思います



それ以外の例だと

数直線がいいかと思います



数直線を思い浮かべてください

0~1までの長さは1です



0~1の間には無限に数字がありますが

それぞれを表す数直線上の点は長さ0です


0も、0.5も、1も、その数字を表す点の長さは0です



何故かというと

もし各点の長さが

正(例えば、0.00000000001)ならば

0.00000000001×∞=∞ となってしまうからです




ということは


数直線上の0と1の間にある点の長さを足し合わせると

0+0+…(無限)=1 です


0~2までであれば、同じ議論で

0+0+…(無限)=2 になります


それどころか

数直線全体は、無限の長さを持っているので

0+0+…(無限)=∞ という結論さえ出てきます



この議論で0だけ出てこないのは

0~0の間には、点が1個(0という数字を表す点)しかないからです



# どれだけ小さい正の数字(実数)であっても

0とその数の間には無限に数字が存在します

実数の不思議な性質です





1/3×3 = 1 のはずなのに
0.3333…×3 = 0.9999… のパラドックス





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